TSUNAGU株式会社

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温泉街を支え盛り上げたい。地域を思う2社の地域型M&A。

温泉街を支え盛り上げたい。地域を思う2社の地域型M&A。

歴史ある温泉郷、那須塩原で50年に渡り温泉宿を支えてきたリネンサプライ業者「有限会社白塩舎」。後継者不在により経営が危ぶまれた白塩舎をM&Aで譲受したのは、同じく那須塩原で燃料販売業を営む「有限会社リビングショップミカワヤ」でした。


白塩舎は1973年に那須塩原で創業したリネンサプライ業者。顧客層は高級旅館から低価格帯のホテルまでと幅広く、寝具類やタオル、浴衣、おしぼりまで宿泊に欠かせないリネンのケアを一手に請け負っています。取引先は塩原地区の宿泊施設だけでも65社中60社と、地域に欠かせない存在でありながら、白塩舎が事業存続の危機に立たされていたのは後継者不在によるものでした。

そんな白塩舎をM&Aで譲受したのは燃料販売業を営むリビングショップミカワヤ。白塩舎の新代表取締役に就任した佐藤幹雄さんには、「地域になくてはならない会社を存続させたい」という想いがありました。

旧社長の決断力 / 新社長の実行力

温泉街である那須塩原の地においてリネンサプライ業は宿を支える地域になくてはならない企業であり、取引先の温泉宿からも継続を望む声が多く上がっていました。観光客の減少、新型コロナウィルスの影響もあり廃業する宿泊施設も増える中、西那須野商工会の会長も務める佐藤幹雄さんは、地域経済発展の観点から譲受を決断しました。

「リビングショップミカワヤにとってのメリットというより、地域のために。温泉街であるこの地では地域全体を考えなければいずれ自分たちも立ち行かなくなってしまう」そう話すのは佐藤幹雄さんの息子であり、白塩舎の取締役に就任した佐藤信之さん。

地域に欠かせない企業を残すため、譲渡を決意した白塩舎旧社長の決断力と、譲受後事業体制を整えるためにさまざまな施策を講じてきた新社長の実行力。その2つがあったお陰で白塩舎はいま数々の変化を遂げています。

その1つが総務部長として迎え入れた池下さんの存在です。栃木銀行に長年勤め、退職後のセカンドキャリアという形で白塩舎に入社。家族経営の名残で曖昧な部分も多かった白塩舎の経理基盤を整えることで、経営も盤石なものになりました。

「経理や企業体制だけでなく、福利厚生や業務改善、細かな部分では掃除にしたって、気づいたり声が上がった時点ですぐに取り組まないとすぐなあなあになってしまう」と池下さん。経理だけでなく現場の声を汲み取り、業務改善にも尽力されています。

会社の入り口には取引先から引き取った古いタオル類をウエスとして販売するスペースが。

成約がゴールではなく、新体制のスタートとして地道な実行力が求められるM&A。さらに白塩舎では、リネンサプライ業のイメージを覆すようなブランディング視点の施策にも取り組んでいます。

ブランディング視点で会社と地域を盛り上げる

経営や業務の改善の他に白塩舎がまず導入したのは、ひと際目を惹く真っ赤なユニフォームでした。

「それまでは私たちは温泉街の裏方であり、自分たちが見られている自覚はありませんでした。ただ依頼品の受け渡しをするだけの黒子のような気持ちでいましたから、立ち振る舞いまではあまり意識してこなかったかもしれません」

それがユニフォームを導入して取引先から「リネン業者さん」ではなく「白塩舎さん」と認識されるようになると、社員の意識も大きく変わったと言います。

「真っ赤なユニフォームは最初はどこか恥ずかしかったけれど、白塩舎だとひと目でわかる制服のお陰で自然と態度も変わっていったと思います。どこか誇らしい気持ちで仕事にもやりがいを持てるようになっていきました」

配達用の社用車も車体ごとに「⚪︎号」の文字が。温泉街を支える企業としての意識付けを、社員たち自身が楽しみながら感じられるかたちで取り入れたブランディング施策は、温泉街の取引先からも好評だと言います。

また、もう1つのブランディング視点の施策が、「温泉娘※」というご当地キャラクターへの取り組みです。

※温泉むすめは、アニメや漫画、キャラクターや声優などのIP(IP:Intellectual Property)を通じて、日本全国の温泉地や地方都市の魅力を国内外に発信するために作られた「地域活性化プロジェクト」。

温泉むすめ公式サイト

全国の各温泉地をモチーフとした想像上の二次元キャラクターで地域を盛り上げるこのプロジェクトで、塩原バージョンの「塩原ややちゃん」というキャラクターを制作。白塩舎の前に設置された看板には写真を撮りに温泉娘ファンが訪れます。地域を明るくしたいという思いから、夜間は夜道を照らすようにライトアップもしています。

「那須塩原にまた人を呼びたいという想いがあります。そのためにはまず地域の企業や人々も明るくなければ。白塩舎だけが儲かればいいという発想ではなく、地域全体がよくなっていけるように」

温泉街特有のM&Aのビジネスマッチング

M&Aにおいて企業同士の親和性、ビジネスマッチングの部分は重要な検討ポイントであり、多くのケースでは企業同士の事業を組み合わせて新しい価値を生み出せるかという視点でマッチング企業を選定します。しかし今回のM&Aでは温泉街特有の「繁忙期」にマッチングポイントがありました。

譲受先であるリビングショップミカワヤは燃料販売業であるため、暖房使用が増える冬に需要が高まります。一方白塩舎は温泉宿への宿泊客が増える夏に依頼が増加するためそれぞれの繁忙期がちょうど1年を通してズレるかたちに。

リビングショップミカワヤの閑散期に白塩舎の事業に注力できるお陰でより効率よく施策に取り組むことができ、また、異業種だからこそ取り組めたことも多いと言います。

「異業種だからこそ『今までこうだったから』ではなく、新たな視点で取り組めたことが多いと思います。ただ事業を存続するだけでなく、同業種がやっていないようなことだってチャレンジしていきたいと思っています」

だんだんと「会社」らしく

M&A成約後からさまざまな施策に取り組んで来た白塩舎では、生き生きと働く社員さんの姿が目につきます。しかし社員たちは通達時にはかなりの衝撃を受けたと言います。長年会社を支えてきたベテラン社員の小寺さん(勤続17年)と牛頭さん(勤続30年)は当時をこう振り返ります。

「後継者がいない白塩舎が存続するため…と頭では理解できても、まさか自分がM&Aを経験するとは思いませんでしたし、リストラされてしまうかもという不安もありました」

「リネン業者と燃料販売業者。異業種同士のM&Aでうまくいくのか、買い手企業の社長さんはどんな方なんだろう、うまくやっていけるだろうかという心配もありました」

M&Aの通達後から資料作成に関わったという小寺さんは、当初かなり苦戦したと言います。「不安だし、わからないことだらけでしたが、担当していただいたTSUNAGUの鷹嘴さんが一から丁寧に説明してくれたおかげでなんとかやりきることができました」

また社内制度の改善も最初は浸透させるのに時間がかかりました。有給制度を設けてもなかなか休暇を取らなかったり、長年の癖で無断で休日出勤をしてしまう社員も。目に見えるかたちで「有給カード」をつくり、それを消費してもらうかたちで休暇を取ってもらうようにしたり地道な改善を積み重ねるうち、当初は不安が大きかった社員たちも意識が変わってきたと言います。

「家族経営で曖昧な部分も多かった白塩舎が、だんだんと『会社』らしくなってきた。最初は大変だったけど、よい決断だったのだと今は思います」

変化は必要。だけどゆっくりと。

地道な業務改善から、ブランディング視点のユニークな取り組みまで精力的に変化を生み出してきた白塩舎。それらを実行してきた裏側には新社長の「変化は必要。だけどゆっくり進めなさい」ということばがありました。

変化を急ぐあまり現場を置き去りにしては「人」が付いて来ない。また、これまで培ったものの中から「変えるもの」「残していくもの」を見極めることも大切だと言います。

白塩舎では気温に応じて洗濯の際の水温を変えたり、汚れの種類を見極めて洗剤を変えたりとベテランメンバーの知識や経験が欠かせません。リネンサプライ業は、クリーニング業法に基づく国家資格である「クリーニング師」という資格も必要な技術職です。

現状維持を望む社員もいる中、現場を支えてきた人たちの想いを尊重しながらゆるやかに、でも確実に変化させていく。

取締役の佐藤信之さんの息子さんたちもいずれ白塩舎を継いでいくため、いまは配送業務を担当しながら経験を積んでいます。

「何事も継続することで信頼が得られると思っています。ゆっくりと白塩舎のペースで変わっていけたら」


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