TSUNAGU株式会社

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同業種同士のノウハウを活かし、質の高い人材を育むM&A。

同業種同士のノウハウを活かし、質の高い人材を育むM&A。

ワイヤーハーネスという電子部品の製造を行ってきた宇都宮通信工業株式会社。譲受先の有限会社マルコー電装とは同じ電子機器製造の会社としてお互いの業務領域を活かし合うM&Aに。


ワイヤーハーネスの製造販売を行ってきた宇都宮通信工業が扱うワイヤーハーネスは、あらゆる機械に使われるコネクター部品です。宇都宮通信工業では自社で材料部品を仕入れ、在庫を販売するかたちでワイヤーハーネス製造を続けてきました。

「パチスロ業界が伸びていた頃は特に販売数も伸びていました。内示があるとあらかじめ大量に在庫を製造しておくこともありました」

と話すのは旧社長であり、現在は管理者として会社に残り現場の指揮を継続している川津さん。川津さんはM&A以前には雇われ社長のかたちで代表取締役を勤めており、旧オーナー退任のタイミングでマルコー電装への事業譲渡を決断しました。

在庫を持って販売するという業態は需要があるうちは業績も伸びますが、予測に反して発注がなくなると大量の在庫を抱え仕入れで資金は底を付き、何度も危ない橋を渡ったと言います。

「リーマンショックの時は本当に会社が潰れてしまうのではないかと思う危機もありました。最近の新型コロナの影響も大きかった。なんとか生き残ってきたが、そろそろ変わらなければならない節目にきたのだと思います」

長年培ってきたワイヤーハーネス製造のノウハウを活かし、大切に続けてきた会社を継続させるためにと決断した今回のM&A。旧オーナーは事業内容のシナジーはもちろん、新社長に就任したマルコー電装の手塚さんの人柄を見込んでの決断だったと言います。

「マルコー電装は仕入れは行わずに、取引先からの材料支給を前提に部品製造を行っています。どちらが良い悪いではなく、事業を安定させながら伸ばすためには2社の違いや強みを活かし合うことが重要だと考えています」と手塚社長。

海外製の部品が主流となる中、2社は互いの得意な事業領域をかけ合わせながら新たな取り組みを進めています。

電子部品製造企業としてのビジネスマッチング

譲渡企業である宇都宮通信工業と譲受企業であるマルコー電装は、双方の取引先からの依頼を製造内容にマッチしている方に振り分けたり、互いの得意分野を活かすことで既存案件の製造においても新たなシナジーを生み出しています。

製造だけでなく検品も得意としているマルコー電装が、宇都宮通信工業が請け負った製造の検品をマルコー電装で担当することで外注コストの削減にも繋がり、細かな要望にも応えられるようになると取引先からの信頼感も増してきたと言います。

また、TSUNAGUからの提案でM&A補助金を活用し、自動車部品製造用の機材の導入も行った際も、ISO認証を取得している宇都宮通信工業のお陰で製造体制の整備もスムーズに行えました。

「同業種だからこそ相乗効果を生み出しやすい面もあるかと思いますが、まずは地道に信頼を得ていくことや、今ある技術や繋がりを活かして地道に次の活路を見出していくことが大切だと思います」

環境改善と人材への想い

M&A成約後、手塚社長が取り組んだのは個人面談での社員との対話でした。それまで面談というかたちで社員の声を聞く場がなかったためか、当初は社員たちも戸惑っていたそうですが、徐々にさまざまな要望が出てくるようになりました。

設備の老朽化やシステムの使いにくさ、特に製造上の不具合はベテラン社員ほどその不具合はどうしたら改善しそうかまで詳しく理解しているため、現場の声を聞くことが重要だと言います。

「せっかく導入した新しい設備も、担当社員が使いこなせなければ無駄になってしまう。実際に導入すると製造の前段階で必要な道具など細かなものも出てくるため、とにかく現場と擦り合わせを大切にしています」

また、手塚社長は製造に関わる部分以外の改善にも進んで取り組んできました。フロアを分断するように配置されていた背の高いロッカーを腰の高さのものに変えたり、何十年もボロボロなまま使われてきた椅子を新調したり。物置きになっていた部屋を片付け改装することで応接室をつくったり…

少しでも働きやすく明るい職場にと社長自ら土日を返上して取り組むうちに、社員たちの意識も変わってきたそうです。

「女性は特に、これまでの環境を一度に大きく変えると戸惑ってしまうので部分的に少しずつ変えるようにしました。土日にこっそり作業をして、週明け出社してきた社員が『わっ!』と驚く顔を見るのが嬉しくて」と語る手塚さん。

「全てを自動化することには限界のある部品製造において、最終的にはやはり人の目で見て、調整していく必要があります。当然、設備や仕組みだけでなく人材を伸ばしていく視点が欠かせない。だからこそ、細かな要望を聞いたり環境を整えるのは優先度の高い仕事です」

これからの宇都宮通信工業

事業補助金も活用しながら新たな製造体制づくりをしている真っ只中という手塚社長。既存顧客から新たな仕事を引き出すためにも、要望に応えられる体制を整えることが急務だと言います。

「TSUNAGUの協力の元、補助金などもうまく活用しながら設備や体制を整えています。事業を安定させながら人を増やし、その後は人材の質を高めていくことに注力したいと思っています」

技術者の育成に時間のかかるこの業界において、宇都宮通信工業は営業部長が40代、現場リーダーは30代と若い社員の多い会社です。また若い社員が高い技術を持ち、現場を的確に判断できていることも強みだと言います。

「事業拡大に合わせてただ人を増やすのでは、いずれトラブルが続き事業が立ち行かなくなってしまう。一定数まで社員が増えてきたら、次はひとりひとりのアウトプットを高めることが重要です。そうすれば個々に利益を還元できるようになるし、企業としての基盤も強くなる」

また、2社の強みを活かすからこそ取り組める仕事をさらに増やしていきたいと語る手塚社長と川津さん。いずれは自社開発の部品の製造にも取り組んでいきたいと言います。

「お互いに幾度となく危機を乗り越えてきた経験があるからこそ分かり合える部分も大きいと思います。大きい会社は立て直しも難しい場合があるけれど、小さいからこそ乗り越えて挑戦できることもある。浮き沈みがある業界ではありますが地道な改善を重ね、私たちらしく強い会社になっていけたらと思います」


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